はじめに(課題設定)
「やった方がいいのは分かっているけど、動けない」。
この揺れは、怠けではなく自然な葛藤です。
MIは、この葛藤を否定せず、本人の中の「変わりたい理由」を引き出す対話法です。
現場では、相手のためを思うほど「こうした方がいい」を早く伝えたくなります。
私たちも以前、助言が多い面談ほど相手の返事が短くなり、終わったあとに実行につながらないことを何度も経験しました。
プログラム導入でつまずく理由は、技法そのものより「運用の細部」が曖昧なことです。現場の時間制約を前提に、回せる形へ落とし込む視点が欠かせません。
- この記事でわかること:
- MIの基本姿勢
- 変化言語を引き出す質問
- 行動目標へのつなげ方
結論:説得より、本人の言葉を育てる
支援者が正論を重ねても行動は変わりにくいです。
本人の口から出た理由こそ、行動変化のエンジンになります。
- 抵抗を対立にしない
- 変化言語を丁寧に拾う
- 小さな行動に接続する
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目次
1. 背景と課題整理
MIが必要になるのは、
本人が「変わりたい気持ち」と「変わる不安」の両方を抱えている時です。
この揺れを“やる気不足”として扱うと、支援は説得中心になりやすく、
本人の主体性が下がってしまいます。
現場では、善意の助言が多いほど、
本人が「分かってるけど…」と沈黙する場面が増えることがあります。
これは抵抗ではなく、葛藤が整理できていないサインです。
現場で起きやすい課題
- 助言が多くなり面談が説得になる
- 「やる気がない」と評価してしまう
- 面談後の行動計画が曖昧
典型的なすれ違い
- 支援者: 「毎日通所しましょう」
- 本人: 「頑張ります」
- 実際: 不安が強く、翌週に未実行
このギャップを埋めるには、正解提示ではなく、本人の理由言語化が必要です。
2. 実装手順(現場導入フロー)
Step 1: OARSを意識
- Open question(開かれた質問)
- Affirmation(承認)
- Reflective listening(反射)
- Summary(要約)
面談の前半は、助言より反射を多くすると、
本人の変化言語が出やすくなります。
Step 2: 変化言語を強化
- 「できたらいい」
- 「少しやってみたい」
- 「前はできた」
変化言語が出たら、すぐに広げます。
例: 「少しやってみたいと思った理由は何ですか?」
Step 3: 行動契約
本人が選んだ1アクションを、期限付きで決めます。
行動契約は「小さいほど良い」が原則です。
最初は成功率を優先し、自己効力感を作ります。
ここで目標を大きくしすぎると、本人も支援者も「やっぱり続かなかった」という感覚だけが残りやすくなります。
MIでは、勢いのある言葉をそのまま大目標にするより、1週間で試せる行動へ丁寧に落とす方が実務では安定します。
Step 4: 1週間後レビューで再契約
- 実行できた点
- つまずいた点
- 次の行動調整
この再契約を繰り返すことで、面談が“やる気確認”から“行動学習”へ変わります。
3. ケーススタディ(事業所事例)
事例:N事業所(導入前→導入後)
導入前は、面談中に本人がうなずいていても、どこか借り物の返事に聞こえる場面がありました。
本人の言葉を拾い直して要約する流れに変えたことで、「自分で決めた感覚」が少しずつ戻ってきました。
- 導入前の課題: 面談で合意しても実行されない
- 実施内容:
- MI質問例を面談シートへ組み込み
- 要約を面談末尾で必ず実施
- 1週間行動契約を導入
- 導入後の変化:
- 行動実行率が向上
- 面談時の抵抗発言が減少
- 成功要因: 支援者主導から本人主導へ移行できたこと
4. 監査・品質チェックリスト
- [ ] 開かれた質問を使っている
- [ ] 変化言語が記録されている
- [ ] 要約で合意確認している
- [ ] 行動契約が設定されている
- [ ] 次回レビューを実施している
5. KPI・評価指標(運用の見える化)
| 指標 | 定義 | 目標値 | 計測頻度 |
|---|---|---|---|
| 行動契約実行率 | 合意した行動を実行できた割合 | 70%以上 | 月次 |
| 変化言語記録率 | 面談記録に変化言語が残っている割合 | 85%以上 | 月次 |
| 継続面談率 | 次回面談につながった割合 | 90%以上 | 月次 |
6. よくある失敗と回避策
失敗パターン1: 助言が早すぎる
本人の語り前に助言すると、受け身が強くなります。
先に気持ちと理由を十分に聴いてください。
失敗パターン2: 目標が大きすぎる
大目標は挫折しやすいです。
1週間で試せる行動に分解してください。
失敗パターン3: 振り返りを省く
実施後の振り返りがないと学習が定着しません。
必ず次回面談で確認してください。
7. 法令・ガイドライン参照
- 障害者総合支援法
- 指定障害福祉サービス運営基準
- MI実践関連資料
まとめ
MIは、支援者が引っ張る技法ではなく、本人の力を引き出す対話です。
小さな「やってみる」を積み重ねることで、変化は現実になります。
「動機づけ面接(MI):「変わりたい」を引き出す対話」は、完璧さより継続運用を優先した方が現場に定着しやすいテーマです。日々の実践で得られた気づきをチームで共有し、次の改善を一つずつ積み上げていきましょう。
アイデンドは、八戸・十和田地区を中心に、一人ひとりの「自分らしさ」を大切にする就労継続支援B型事業所を展開しています。また、クリエイティブな活動を支援する「manaby CREATORS」ブランドを通じて、Web制作やデザインなど、従来の枠にとらわれない新しい働き方の選択肢も提供しています。地域の皆さまと共に、一歩ずつ未来へ歩んでいける場所でありたいと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q. MIはカウンセラー資格が必要ですか?
資格がなくても、基本姿勢と質問技法を学べば実践可能です。チームで逐語検討を行うと、面談品質が安定します。
Q. 拒否が強い場合も使えますか?
使えます。説得よりも両価性を丁寧に扱うことで、本人の内的動機が引き出されやすく、関係性も崩れにくくなります。
Q. 面談時間が短い場合のコツは?
焦点を1テーマに絞り、要約で終えるだけでも効果があります。短時間でも「本人の言葉」を残すことを優先してください。