はじめに(課題設定)
利用者さんが「私は何をやっても続かない」と語るとき、
私たちはその言葉を事実として受け止めつつ、別の見方を一緒に探す必要があります。
ナラティブ・アプローチは、問題を消す方法ではなく、
本人の中にある別の物語を見つける支援です。
私たちも、自己否定の強い語りを前にすると、早く前向きな言葉へ導きたくなることがありました。
ただ、励ましを急ぐほど本人には「わかってもらえなかった」と残ることがあり、まず語りをそのまま丁寧に受け止める大切さを何度も学びました。
プログラム導入でつまずく理由は、技法そのものより「運用の細部」が曖昧なことです。現場の時間制約を前提に、回せる形へ落とし込む視点が欠かせません。
- この記事でわかること:
- ナラティブ支援の基本姿勢
- 面談で使える質問例
- 計画へつなげる方法
結論:問題の語りを「可能性の語り」に広げる
支援者の役割は、答えを与えることではなく、本人の語りを広げることです。
- 問題と本人を分けて扱う
- 例外場面を丁寧に拾う
- 小さな成功を新しい物語にする
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目次
1. 背景と課題整理
ナラティブ支援が必要になるのは、
本人が「私はダメだ」「どうせ続かない」という固定的な語りに包まれている時です。
この語りは単なる言葉ではなく、行動選択に直結します。
たとえば、過去の失敗体験が強い方は、
新しい作業提案に対して「また失敗する」と先に判断し、挑戦自体を避けやすくなります。
支援者が正論で励ましても、物語が変わらなければ行動は変わりにくいです。
ナラティブ・アプローチは、
問題を否定するのではなく、問題一色の語りをほぐして“別の物語”を育てる実践です。
現場で起きやすい課題
- 問題行動の説明だけで面談が終わる
- 支援者が解釈を先回りする
- 本人の言葉が記録に残らない
よくある停滞場面
- 初回面談: 課題ヒアリングで時間が終わり、例外場面を聞けない
- 中間面談: 支援者が要約しすぎて、本人語りが薄くなる
- 計画会議: 本人の原文がなく、解釈だけで目標が決まる
2. 実装手順(現場導入フロー)
Step 1: 問題の外在化
「あなたが問題」ではなく、「困りごとが生活に影響している」と整理します。
言い換え例:
- 「あなたが続かない」 -> 「続きにくくする状況がある」
- 「あなたが弱い」 -> 「疲れが重なると対処が難しくなる」
Step 2: 例外探索
- うまくいった日
- 困りごとが小さかった場面
- 助けになった行動
質問例:
- 「最近、少し楽だった日はいつでしたか?」
- 「その時、何が違っていましたか?」
Step 3: 意味づけの再構成
例外を「偶然」で終わらせず、本人の力として言語化します。
支援者が一方的に評価せず、
本人自身の言葉で「なぜできたか」を言語化してもらうことが重要です。
ありがちな失敗は、支援者が良い意味づけを先に作ってしまうことです。
きれいな言葉でまとめても、本人の実感とずれていれば次の行動にはつながりません。少し時間がかかっても、本人の言葉が出るまで待つ方が結果的には前に進みます。
Step 4: 行動計画化
新しい語りを短期目標に落とします。
Step 5: 面談記録に「語りの変化」を残す
- 問題語り(開始時)
- 例外語り(中盤)
- 可能性語り(終了時)
この3点を残すと、次回面談で変化を追いやすくなります。
3. ケーススタディ(事業所事例)
事例:M事業所(導入前→導入後)
導入前は、面談のたびに「また同じ話になってしまった」という停滞感がありました。
そこから変わったのは、新しい助言を増やしたからではなく、例外場面を一緒に拾い直し、本人が自分の力として語れる瞬間を増やしたからでした。
- 導入前の課題: 自己否定的な発言が多く、挑戦を避ける
- 実施内容:
- 週1回のナラティブ面談
- 例外場面カードを作成
- 面談内容を目標へ接続
- 導入後の変化:
- 本人の自己表現が前向きに
- 新規作業への挑戦が増加
- 成功要因: 「できない理由」だけでなく「できた場面」を支援軸にしたこと
4. 監査・品質チェックリスト
- [ ] 問題外在化の言語を使っている
- [ ] 例外場面の記録がある
- [ ] 本人の原文発言を残している
- [ ] 面談内容が計画へ反映されている
- [ ] 定期面談が継続されている
5. KPI・評価指標(運用の見える化)
| 指標 | 定義 | 目標値 | 計測頻度 |
|---|---|---|---|
| 例外記録率 | 面談で例外場面が記録された割合 | 80%以上 | 月次 |
| 前向き語り増加率 | 面談で前向き自己表現が増えた割合 | 前月比増加 | 月次 |
| 計画反映率 | 面談結果が短期目標に反映された割合 | 85%以上 | 月次 |
6. よくある失敗と回避策
失敗パターン1: 励ましだけで終わる
共感は大切ですが、行動に落ちないと変化しません。
例外探索から目標化まで進めてください。
失敗パターン2: 解釈を押し付ける
支援者の物語ではなく、本人の物語を中心に扱う必要があります。
失敗パターン3: 記録が抽象的
語りの変化は具体引用で残すと、チーム共有しやすくなります。
7. 法令・ガイドライン参照
- 障害者総合支援法
- 指定障害福祉サービス運営基準
- ナラティブ実践関連資料
まとめ
ナラティブ・アプローチは、本人の尊厳を守りながら変化を促す実践です。
語りを変えることは、行動を変える土台になります。
「ナラティブ・アプローチ:利用者の「物語」を書き換える」は、完璧さより継続運用を優先した方が現場に定着しやすいテーマです。日々の実践で得られた気づきをチームで共有し、次の改善を一つずつ積み上げていきましょう。
アイデンドは、八戸・十和田地区を中心に、一人ひとりの「自分らしさ」を大切にする就労継続支援B型事業所を展開しています。また、クリエイティブな活動を支援する「manaby CREATORS」ブランドを通じて、Web制作やデザインなど、従来の枠にとらわれない新しい働き方の選択肢も提供しています。地域の皆さまと共に、一歩ずつ未来へ歩んでいける場所でありたいと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q. ナラティブは時間がかかりませんか?
時間はかかりますが、短時間でも継続すれば効果があります。1回ですべて深掘りせず、テーマを絞って積み上げる運用が現実的です。
Q. 問題が深刻なケースでも使えますか?
使えます。問題の整理と意味づけを支えることで、介入方針の合意形成がしやすくなり、支援の迷いを減らせます。
Q. 記録はどう残せばよいですか?
本人の語りと支援者の解釈を分けて記録してください。引用を残すと次回面談で連続性が生まれます。